AWS AND SKYARCH
渥美俊英さんインタビュー
~AWSとスカイアーチ~
顧問 渥美 俊英
常務執行役員 高橋 玄太
第5章
『スカイアーチを選んだ理由は何ですか?』
高橋
その中(注.1)でもスカイアーチは後から参加したので、最初、どういう風に見えていたのかをお聞きしたいのですが…
これまでのビジネスにおけるパートナー制度というのは、商材をたくさん売っている会社であったり、歴史のある企業がずらーっとパートナーランクの上の方を占めていて、おなじみの人達が沢山いるって感じになっていたと思うのです。
しかし、AWSのエコシステムって、スカイアーチも含め、思いがけない小さい会社も混ざっている。
これは何故、このような形になったとお考えでしょうか?
渥美
今までのシステムというのは、システムが大きくなればなるほど、それを管理する大きな組織が必要で、その組織を維持する為には、そのシステムの仕様、内容を文書にまとめて共有する、ということが重要でした。
一旦、ハードウェアを購入すると、一度設定したシステムは、簡単には変更できないので、念には念を入れた設計、テストを行う必要がある。
結果として大きなシステムであればあるほどほど、文書や設定作業、関わる人数や管理工数が雪だるま式に大きくなってしまって、結果的にはコントロールできなくなるという側面がありました。
これに比べて、AWSを利用すれば、1時間単位で試してみることが出来るので、やってみないと解らないモノは全部試してみれば良い…これが、今までと大きく違う点となります。
仮に100台のサーバーが必要というのならば、実際に1時間、クラウド上に用意して、試してみることも出来る。
何よりも試してみるということで実証することの方が、ずっと確実な訳です。
そういう意味で言うと、実はクラウドのプロジェクトというのは、今までのプロジェクトに比べると、ものすごく小さく早く、造り上げる事が出来る。
今までならば色々な組織とか、色々な会社が集まっている必要があった処を…今は「フルスタックエンジニア」という言い方をしますが、「ネットワーク」「セキュリティ」「インフラ」「アプリケーション」…これら全てを理解し使用できる、という人が、プロジェクト全体を管理すれば、クラウドを最小限で使い、実行する事でプロジェクトを構築出来てしまいます。
大手のベンダーよりも、必ずしも大きくない会社であっても、クラウド技術を理解しているエンジニアを集めた少数のチームによってならば、同じ様にプロジェクトを構築する事が出来る。
こういう考え方も、5~6年前までは、理屈では「可能だろうな」と思っていたけれど、実際にこの数年間で現実になって、小規模なベンチャー企業などが、大手ベンダーと全く互角にコンペで勝負をして、受注を勝ち取るということが、この数年間で当たり前になっていますね。
本当にITの民主化ということで…
「ITのビジネス、技術が解る処で、クラウドに徹していれば大手には絶対負けない」ということが現実的になってきたので、とても楽しい話。
技術者もワクワク出来る楽しい時代になったと思いますね。
高橋
そうですよね。パブリッククラウドの出現によって、ITの仕事の仕方も変わってきて、そこで活躍する会社も多様性が出てきた。
大手が必ずしもダメっていうわけではないけど、小さい会社でも活躍出来る可能性が増えた。ということですね。
ではこの度、渥美さんには2017年の1月から、ご縁があって、スカイアーチの顧問になって頂いた訳ですけれども、数あるパートナー企業の中で、スカイアーチにどんな可能性とか期待をもってご参画いただいたのか改めてお聞かせ頂けますでしょうか?
渥美
私がスカイアーチの顧問をお引き受けした理由は、いくつかあるんですけど…一つには、現在クラウドによって現実化しているITの民主化。
必ずしも大手ベンダーでなくても、同等なパフォーマンスを実現する、重要なシステムをユーザーのために提供出来る。クラウドを理解していればそれが可能となる。これを実現したい、お手伝いしたいというのが大きな理由。
その中でも、スカイアーチは幾つか面白いと思った処があって、一つはコミュニティを凄い重視している。
コミュニティがクラウドの文化と相性がいいという事を理解していて、そこにコミットしているということ。
自分が…40年近く前になるけど、まだ小さな会社で、新しい技術に徹して伸びようとしていた、その時の若い人間ばかりの会社と、雰囲気が似ているという処に関心を持ちました。
実際にスカイアーチの中に入ってみると、やはり若い人たちが多く、真剣に勉強して新しい技術にチャレンジしていたり、実際にコミュニティで勉強しているという人達が多く在籍していて、そんな中にジョインして毎日を過ごしているのが楽しいって感じかな。
高橋
スカイアーチも含めて、AWS、クラウドそのものが、ますます進化していくと思うのですけど、今年のサミットの様子などから感じた事も含めて、今後2~3年から4~5年、クラウド業界はどんな動きをみせると渥美さんは考えていらっしゃいますか?
渥美
AWSサミットは今年で6年目ですけど、AWSはここ2年ほどで、エンタープライズ企業向けの利用が急増しています。
最大の話題は、三菱東京UFJ銀行がAWSを本格的に利用するという事、これは大きなインパクトがあって、金融機関だけではなくて、Fintechのスタートアップの金融サービスをやるという会社にとっても、改めてクラウドが必須なものだと理解させる事となりました。
製造業、サービス業、その他要件の厳しい業種においても、金融業界のこういった動きというのは、この後大きなインパクトになると思います。
先程の、ITの民主化ということから言えば、必ずしも大手ベンダーでなくても金融、Fintechのサポートが出来る企業が現れる、という時代にこの後本格的に変わってゆくのではないでしょうか?
高橋
今回のサミットではFintech以外にも、新ラーニングとかAIとか相当話題になっていましたけど、新しいテクノロジーのトレンドとクラウドの関係、その中で私達パートナーはどのように関わっていく事になるのでしょうか?
渥美
クラウド業界の大きな話題は「AI」「IOT」。
Amazonの場合は「VoiceUI」と言われている、音声認識とUIを併せたものが、この後急速に伸びるだろうと思います。
AIとかIotに関して言えば、今までのITベンダーが提供するモノだとどうしても、ハードウェアのインフラを売るというビジネスがベースになると思われますが、クラウド事業者であるAmazonのAIとIotというのは、ソフトウェアでの提供となるサービスですから、今後物凄く大きく伸びるだろうと思います。
AIも、ハードウェアは高額のライセンスを必要とするビジネスになっていますが、Amazonではソフトウェアをほぼ無料に近い形で提供しており、パートナーやエンジニアには、さらにそれをどの様に使用するかという処が求められています。
インフラだけではなく様々なアプリケーションに、AIをうまく使っていこうという流れの中で、自分でクラウド上で試す事が出来るソフトウェアでの提供は、この後のAIの広がりに大きく影響するだろうと思います。
もう一つのVoiceUIというのは「Alexa(アレクサ)」と呼ばれる、人間の言葉を理解して、色々なサービスを提供するコンピュータの音声認識型のユーザーインターフェイスのシステムになります。
これが、今後のクラウドビジネス、IT業界を変えてゆくものになると思われます。
日本ではまだ発売されて間もないので、イメージ付きにくいかもしれないですけど、米国ではこの1年余りで、急速に1千万、2千万をかけたソフトウェアの開発のエコシステムが出来ていて、直近で1万以上のサービスが提供されています。
日本でもおそらく、この2~3年で人間とコンピュータとの付き合い方というものが、「Alexa」によって一変するだろうと思います。それが米国ではすでに実現されているのです。